« 2月のアラカルト | トップページ | 北朝鮮・中国の解放政策受け入れ中国の属国化へ〈2月〉 »

2011年2月 4日 (金)

孤舟〈2月〉

孤舟

渡辺 淳一 集英社

 昨年の秋、大学の集まりで、ある同級生がこの作品をとり上げて、名著だから是非読んだらいいというので求めたものです。
ある出版関係の会社の定席常務執行役員であった主人公は、定年を間近に控え取締役への昇格か、それなりの子会社の社長のポストを想定していました。
しかし彼は社長の派閥に属していなかったこともあり内示されたのは、大阪の小さな子会社の社長のポストでした。
今までの社内の活動と地位から考えると考えられない低いポストであったので、プライドを踏みにじられた思いで、その内示を断ってしまいます。
そのため彼は60歳の定年を迎えると共に会社を去ります。
物語は会社を去ってから1年半たった時から始まります。

仕事しかない男から仕事がなくなった時

「ざまあみろ」という気持ちで辞めてみたが、辞めてみると職を失った侘しさと虚しさが身に振りかかってきます。
辞めて生まれる自由な時間をゆっくり楽しもうといろいろ考えていたことは、いざ取りかかろうとすると皆つまらないものに思えます。
カルチャークラブに行こうかと思っても一流大学を出た自分が若者や主婦と一緒に机に座って初歩から学ぶことが気重になります。
少し腕に覚えのある囲碁をやろうと思って出向いた囲碁クラブで手もなくひねられ「重役さんは弱いな」といわれただけでいやになってしまいます。
昔の気持ちを持ち続けて生きているため、何かとプライドが邪魔をして思うように振舞えないのです。
当然妻との関係も思わしくありません。
妻の言うことやることの全てが気に入りません。
何かを言うと、その言うことが気に入らないで心の中で反論します。
いつもイライラしているので、たまに思っていることが口に出ると口論になります。
とまあこんな具合で、渡辺淳一らしく、それなりのストーリーはあるものの、ぐずぐず、イジイジした心の中のつぶやきが綴られていきます。
会社で働いていた時はそれなりの地位にあり、プライドを持っていた男が会社を辞めて、肩書きが外れただの人になったとき、その状況の変化を受け入れて、生活も考え方も変えなければならないのに、それを受け入れることができないであがいている男の物語です。
読みようによっては、なる程とも思えますが、何とつまらないことにいちいち引っかかるのだろうと可愛そうになってしまいます。
勧めてくれた同級生はきっと肯くことが多かったのだろうと思いますし、同じような気持ちのある人には名著かもしれません。

2月 4, 2011 4.今月の本 |