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2011年2月 6日 (日)

ウィスキーの復権〈2月〉

 ウィスキーが息を吹き返しています。
昔の水割り、オンザ・ロックではなく、ハイボールとして、大人のバーではなく、居酒屋で復活しました。
復活の裏側にはウィスキーメーカー・サントリーの取り組みがありました。
 ウィスキーは戦後の日本人の生活の洋風化と共に隆盛を極め、洋酒文化をリードしました。
サントリーのトリスが人気となったのは1950年代で、70年代のウィスキー全盛期には洋酒部門がサントリーの8割を稼いでいました。
特に「サントリーオールド」というお化け商品がサントリーの家計を支えていました。
それが酒税法の改正を機に下り坂に向かいます。
焼酎ブームが起こり、ワインブームが後を追い、ウィスキーは押され続けました。
 ウィスキーを核とするサントリー洋酒部門の売上高は1983年の6300億円をピークに25年間に亘って落ちつづけ2008年には最盛期の5分の1にまで減少してしまいました。
「失うものは何もないから、ウィスキーをなんとかしろ」といわれてウィスキーの復活の動きが始まったのは2008年4月のことでした。
先ず手がけたことはウィスキーの黄金期を全然知らない20代、30代の若手を中心に「ウィスキーは何故売れないか」を徹底的に調査しました。

その結果3つのことがわかりました。
 1つ目は、水割りやロック、ストレートで飲むウィスキーは、2軒目のスナックやクラブで楽しむ酒になっており、不景気の今は1軒目の居酒屋やレストランだけで帰ってしまいウィスキーとの出会いが少なくなっている。
 2つ目は、サントリーが勧めていた水割りやロックの黄金比率(アルコール度数12%以上)を消費者は「濃い」と感じ、8%に薄めた味を好んでおり、レモンを軽く絞ることも好評で、メーカーの常識を破る飲み方をしていました。
 3つ目は、「ウィスキーはおやじくさい」「アルコールが強くて飲みにくい」「食事に合わない」という常識を若者が持っていたところです。
 こうした調査結果を基に試行錯誤の末にたどり着いたのがウィスキーを1軒目で食事と一緒に飲む酒にすること、特に「居酒屋で乾杯される酒」にすることでした。
ウィスキーをジョッキに入れてソーダで割る飲み方~ハイボール~が考案されました。
ウィスキー衰退の原因に水道水で水割りを作ったり、冷蔵庫の霜のついた氷を入れてお客に出したりして、おいしいウィスキーをまずく飲ませていたこともあったのでおいしい飲ませ方を飲食店に徹底しました。
ハイボールは①温度はグラスいっぱいの氷と冷えたソーダ②炭配圧はソーダを丁寧に注ぎ、1回混ぜるだけ③濃さはウィスキー1対ソーダ3~4の3つを守ることです。
こうして炭酸ソーダ割りの「ハイボール」としてウィスキーが居酒屋で復活しました。
本質的な味と飲ませ方で勝負したことで、多くの客に支持されるようになったのです。
飲食店の取り扱いに続きスーパーや酒屋の店頭でも、ウィスキー関連商品の棚が一気に拡大してきました。
 厳しい経済情勢を考えて、角ハイよりもトリハイを戦略商品に選んだことも成功因でした。
一方では、高級ブランド山崎はプレミアムハイボールとして、白州では森香るハイボールとしても提供し、ウィスキー本来の味を伝えることも目論でいます。
1年半で起きたハイボールブームは仕掛けたサントリーにとって予想以上のものでした。
 しかしブームが到来したことで思いがけない事態も招来しています。
ウィスキーの原酒が足りなくなってしまったことです。
蒸留酒であるウィスキーは製造に時間がかかり、売れたからといってすぐには増産できないのです。
トリスを戦略商品にしたのも角瓶が足りなかったこともあります。
またブレンダーと呼ぶウィスキーのブレンド技術者の育成にも少なくとも5年はかかります。
最盛期の5分の1にまで落ち込んだ商品がまた昔日の面影を取り戻すということはそうあるものではありません。
この復活劇の成功因はどこにあるのでしょうか。

サントリーの成功要因

 第一は「ウィスキーは何故売れないか」を徹底的に調査したことです。
何故売れなくなったかを調査したらまた別の結果が出たかもしれません。
しかし、売れないという事実から出発したため、売れる筈だという思い込みから解放され、売れない真の原因を探し出すことができました。
メーカーの常識を破る理由を見つけることができたのもそのお陰です。虚心胆懐に物事を見ることの大切さを物語っています。
 第二は、復活の役割をウィスキーの黄金期を全く知らない20代、30代の若者に委ねたことです。
黄金期を知る者は、昔は売れたのにという思いがあるためにどうしても真実に向きあいたくないという気持ちがあります。
そんな思いを持つ者では真実を探し出すことは困難です。
ウィスキーはこんなものという既成概念を持っていたのでは、居酒屋でカンパイするようなハイボールなど考え出すことはできません。
事実社内には「ウィスキーを本当に好きな人にだけに飲んでもらえればいい」という声もありました。
まさに「新しい酒は新しい革ごろもに盛れ」です。
 第三は、おいしい飲ませ方を飲食店に徹底したことです。
店毎に作る人毎に味が異なっていたのでは、ハイボールはここまでは広がらなかったことと思います。
おいしいレシピを作って、それを守らせたからこそ高い評価を生み出しました。
会社の取扱い商品の中にもサントリーのウィスキーのような商品が埋もれているかもしれません。
そんな商品も視点を変えることで、新しい使い方を提案することにより生まれ変わることがあるのかもしれません。
しかし、そんな時にもサントリーの挑戦のポイントは外すことができないのではないかと思います。

2月 6, 2011 2.チャレンジ |