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2010年9月 8日 (水)

サムスン〈9月〉

 韓国経済が好調です。
リーマンショック以後2割以上も円がきり上がった日本に対して、韓国は30%程もウォンが切り下がって輸出品の価格が下がったため、輸出が絶好調です。
中でも韓国のGDP(国内総生産)の約20%を占めるサムスンの勢いは止まるところを知りません。
 2009年のサムスンの連結売上高は9兆9000億に達し、米ヒューレッド・パッカードやドイツのシーメンスにほぼ並ぶ規模です。
ソニーが7兆6000億、パナソニックが7兆4000億ですから、すでに日本の2社を抜いています。
利益に至ってはサムスンが7300億円に対して、ソニー赤字400億、パナソニックは赤字1000億以上という、ていたらくです。
時価総額では9兆で、ソニー、パナソニックの3倍もあります。
海外売上比率もサムスン90%に対してソニー74%であり、パナソニックに至っては47%しかありません。
 今後の展開でもサムスンは2020年に売上高を現在の約4倍の36兆円を目標にしています。
 サムスンの強さの原動力はどこにあるのでしょうか。

生き抜くために懸命に働く

 第1に厳しい社内競争です。
サムスンには韓国内に85,000人の社員がいます。
彼らは韓国社会では「サムスンマン」と呼ばれ、国家経済を支えるエリートとして一目置かれています。
彼等自身も韓国経済を背負っているという自負があります。
実績をあげ、出世することが結果的に韓国社会を豊かにすると信じています。
彼らは猛烈に働きます。
 日本では「ワークライフバランス」といって、仕事と私生活の調和が叫ばれますが、サムスンには、仕事を最優先するモーレツ社員が沢山います。
始業開始2時間前の午前6時から仕事を始める社員も少なくありません。
目標達成のためなら土日もなく働きます。
目標を達成できない者は会社を去らねばなりません。
目標達成すれば昇進と昇給という褒美が待っています。
85,000人の社員のうち役員は1%で868人です。
給料は部長クラスまでは日本の電機メーカーとほぼ同一水準ですが、役員になればぐんと跳ねあがり社内取締役になると5~10億の年俸にストックオプションが加わります。
しかし役員になったからといってもその地位は安泰ではありません。
目立った成果がなければ就任1年目で職を解かれることもあります。

 第2に自ら生き抜くために猛烈に働くことです。
 ~若い上司がきたら自ら去るのがルール
 高度成長期の日本人も豊かな明日を求め、身を粉にして働きました。
しかし当時の日本は終身雇用で、懸命に働くことで、会社は雇用を守ってくれました。
しかしサムスンには労働組合はありません。
社員は、自らの実力を会社に認めさせなければ自分の雇用を守ることはできません。
サムスンも長い間、終身雇用制を取っていました。
しかし1997年に韓国を襲ったアジア通貨危機がキッカケで経営危機に陥ったサムスンは大リストラを断行し、6万人の社員を4万5000人に減らしました。
これを境に終身雇用制が廃止され、能力主義を徹底し、成果を出せば若くても重要ポストに登用するようになりました。
 儒教社会である韓国は年功序列意識が日本より厳格です。
年下の上司の下で働くことは、受け入れがたい屈辱となります。
自分より年次が下の社員に出世レースで抜かされることはプライドが許しません。
だから懸命に働きます。
それでも年下の者が上役につけば、残された道はただ一つ、自ら会社を辞めるのが習わしとなっています。
儒教の教えと結びついた実力主義が社内競争を一層厳しいものとしています。
 サムスンマンになるということの韓国社会で持つ意味は日本人の想像をはるかに超えています。
超エリートとみなされ、親類あげての大騒ぎとなります。
サムスングループは毎年「SSAT」と呼ぶ大学生の選抜試験を実施します。
SSAT対策のため塾や模試試験が繁盛し、書店には参考書が並びます。
学生はサークルをつくり、仲間内で面接の練習をするほどの熱の入れ方です。
そして10人に1人だけが入社を許されます。
サバイバル競争から脱落する者がいくらいても新しい挑戦者が次々と送り込まれる仕組が出来上がっているのです。

サムスン理念の刷り込み

 第3に研修による「サムスン理念」の刷り込み
 首都ソウルから車で1時間程のところにホテルのような宿泊施設の併設された研修施設「人材開発院」があります。
サムスンの社員は新入社員から中堅社員、役員候補まで何回も泊り込み研修を受けます。
 新入社員は毎春3週間に及ぶ厳しい泊り込み合宿に参加します。
起床時間は朝5時台、夜まで研修は続きます。
土日もありません。
ここでは社会人としての礼儀、ビジネスの基礎知識、サムスンの歴史や経営理念の講義から、社歌斉唱、サムスン体操まで学びます。
特に経営理念、価値観、チームワーク、不可能なことはないという精神力などを骨の髄まで叩きこみます。
宿題が多くて寝るのは2~3時間。
精神と肉体の限界を感じる状態で、集中的に研修を受けていると、いつの間にかサムスンは素晴らしい会社だと思うようになり、無意識のうちに誰もがサムスンマンに生まれかわります。
こうして、情報収集力と分析力に勝れて、決められた戦略を実行して成果を出そうとする意識の高いサムスンマンが生まれます。
 日本のメーカーのモノマネから始め、世界シェア首位に上り詰める過程では随分と苦労もあったことでしょうが、サムスンは今や日本の企業ではとても追いつかないレベルまで到達したのかもしれません。 

9月 8, 2010 2.チャレンジ |