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2010年9月 7日 (火)

見えない汚染が生む「死の連鎖」〈9月〉

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 米国のルイジアナ州沖のメキシコ湾で石油掘削基地「ディープ・ウォーター・ホライズン」が爆発事故のために水没したのは2010年4月22日。
5月の中旬、付近を調査していた科学者のチームが海底油田からのプルーム(流出物)が海中に広がっているのを発見しました。
プルームは原油とメタンの混合体で、長さ24㎞、幅8㎞、厚さ90mでした。
海中の原油プルームの存在は油は水に浮くという常識とは矛盾しています。
実際浅い場所にある油井やタンカーから原油が流出した場合は海面に浮びます。
しかし今回のように水深約1500mにある油井から原油とメタンが激しい水圧と低温の下で噴出すれば、常識では考えられない事態を引き起こします。
原油は無数の細かい油の粒子になって分散し、海中に浮遊したまま海面に上がってきません。
化学処理剤は油膜を微細な油滴にして分散するので、原油流出時に化学処理剤を使用すると、微小な混合物が海中深く沈んでいく可能性があります。
BPは制御不能になった油井に70万ℓの化学処理剤を注入したため流出原油が海面に浮上しにくい形に分解されてしまったようです。
 プルームは見た目が黒くないので肉眼では捉えることはできませんが、フィルターにかけると黒い粒子が混じっていることがわかります。

酸素濃度の低下と窒息死

 プルームの被害は2つあります。
 1つは酸欠地域を生み出すことです。

プルーム内部では酸素濃度が30%低下します。
酸欠になれば魚や貝が死滅します。
 2つ目は原油とメタンが生物に直接及ぼすダメージです。
プルームに含まれる油の小さな粒子でもエラにつけば魚は窒息死します。
最も大きな痛手を受ける魚の一つはタイセイヨウクロマグロです。
大西洋に分布するクロマグロの産卵地域は地中海とメキシコ湾だけですので、タイセイヨウクロマグロは絶滅しかねない状況です。
オサガメやマツコウクジラはプルームの存在が確認されている水深1000m近い水域まで潜ります。
深海に生息するサメやエビ、イカは海面での原油流出事故では被害を受けませんが、プルームが及ぼす影響にはもろにさらされます。
 海面に浮ぶ油は最終的には気化するか、太陽光線によって変質するか微生物に分解されるか、岸辺に流れ着いて回収されます。
しかし水中に漂う油がどうなるかはほとんどわかっていません。
今回の事故が図らずも壮大な実験になるのです。

9月 7, 2010 3.スクラップ |