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2010年8月 7日 (土)

何とも悠長な「財政運営戦略」〈8月〉

先日こんな記事を目にしました。
もうすぐ20歳になる息子が、「借金時計というものを学校で勉強して社会に出る意欲が薄れた。
海外に出た方がいいかもしれない」と言っていた。
借金時計というのは日本が抱える負債の現在高を示す目安になるもので、日本は900兆円近い負債を抱えていて、その額は日を追うごとに増えている。
息子たちの世代はこの借金を自分たちが払うことになると気付きはじめている。
社会に羽ばたく矢先に身に覚えのない借金を背負うのだから日本にいたくないと思うのは無理もない。
将来を担う世代が社会に絶望しているというのは由々しき事態だ。

全く同感で、子供手当てなど、将来子供が借金を払うことになるのならいらないという声も多いようです。

10年後に基礎的財政収支を黒字に

 ギリシャの財政危機に始まるP11GS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、スペイン)問題に加えハンガリー、イギリスに至るまでGDP(国内生産)に占める財政赤字の多い国の国債が投機筋に狙われていますが、それが終わったらその標的になるのは日本だとも言われています。
 少しは危機感を持ったのかは分かりませんが、政府が中長期の財政健全化に向けた「財政運営戦略」を決定しました。
これによると国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度までに黒字化する目標で、11年度から3年間は国債の元利払い費以外の歳出を横ばいで据置くとのことです。

2020年度までの平均で年1.5%の経済成長を続けた場合(歳出削減をしないと)2020年度には、国、地方の基礎的財政収支は21.7兆円の赤字となり、2%の経済成長をした場合でも13.7兆円の赤字となります。
消費税1%でおよそ2.4兆円ですから、黒字化するためには1.5%成長の場合9%、2%成長の場合で5.7%の消費税の増税が必要になります。
消費税10%にするというのは、2%成長を達成することを目標にしていることを意味します。
 自民党政権時代に10年代初頭に基礎的財政収支を黒字にするという目標を掲げていましたが断念した経緯があります。
基礎的財政収支とは、公共事業、社会保障、防衛などの政策的経費が毎年の税収でどの位賄われているかを示す指標で、税収が政策的経費を上回る状況を「黒字」下回る状況を「赤字」といいます。
企業会計に譬えれば、GDPが売上、税収が売上総利益、政策的経費が販売費一般管理費、営業損益がプライマリーバランスということになります。
これがたとえ黒字になっても日本国では国債の利息が凡そ10兆円、元本の支払が11兆円ありますので、支払利息を加えた経常利益は10兆円の赤字ということになります。

利子と元本の返済は棚上げしたままで借金を増やす

 この戦略には大きな問題点があります。
第1は、10年後に黒字化を目指すという何とも悠長な目標です。

これを企業にたとえれば、日本は年間売上高(GDP500兆円)の2倍の借金(900兆円)を抱えていながら毎年月商(31兆円6.4%)近くの営業赤字を垂れ流している会社です。
その会社が、10年後には営業損益を黒字にしますから借金(国債)の返済と利息の支払いはとりあえず棚上げにしてもらって、足りない分は借金(国債)を増やさして下さい。
ただし急な経費の減額は四方に痛みが生じますので、3年間は今迄どおり使わせて下さいと言っていることと同じです。
会社であれば「気が狂っているんじゃないの、勝手に野垂れ死にしてください」と銀行から叩き出されるのがオチですが、日本国の場合、国民から集めた預金の8割を国債購入に充ててくれる親切な郵貯銀行があって、気前よくもハイハイとその要請に応じています。
不良債権となって貸付金(国債)が回収不能になることを知っていながら何とも悠長なことです。
更にこれから先の借金の要請に応じられるように個人の預金の保障限度を、法律を改正までして1000万から2000万円に引き上げようとしています。
郵貯銀行は確信犯に近い詐欺師ということになります。

 第2は、3年間はこのまま経費は削減しないとしていることです。
税金のムダを削れば15兆円位は出てくるといっていたのはウソだったのでしょうか。
長い間国政を野党として横から見ていたので、ムダなところは一目でわかるから15兆円くらいはたちどころに指摘できると思っていたのに、ムダ削減の努力もしないで早々と今のままの経費でいくというのですから、ヤル気があるのか疑いたくなります。

迅速で果敢な英国

 悠長な我が日本に比べ英国のキャメロン政権は、スピードが違います。
①2015年までに政権赤字のGDP比を10.1%から1.1%に引き
 下げる
②子供手当てや福祉給付カットなどで歳出を毎年4兆円ずつ削減
 (イギリスのGDPは凡そ160兆ですから日本でいえば12兆
円に
 相当)
③付加価値税を17.5%から20%に引き上げるとともに、銀行新税
 を導入
④法人税は2014年までに28%から24%に引き下げる

何ともうらやましい限りで、イギリスに移り住みたくなります。
この2国を比較すると、政権を担う人間の志の高さの違いをヒシヒシと感じます。
今回のチャレンジはいつもと趣を異にしていますが、日本の先行きに暗澹としてつい書きつらねてしまいました。
皆様はどう思っていらっしゃいますでしょうか。
ご意見をいただければ幸いです。

8月 7, 2010 2.チャレンジ |