« 志・師・詩・死〈6月〉 | トップページ | 皆様からのご意見〈7月〉 »

2010年6月 8日 (火)

藤本能道と菊池寛美記念智美術館〈6月〉

人間国宝・藤本能道(ふじもとよしみち・1919-1992)
201006_2
 入り口から会場までの廊下に掛けてある、白い地に描かれたカワセミの陶器を見ただけで、今日は良いものに廻り合えそうだという予感がしました。
会場には数多くの筥や壷が展示してありますが、その全ては白地に多彩な色で描かれた鳥や虫が遊んでいます。
ある鳥は今まさに飛び立とうとしており、ある鳥は軽やかに空を舞い、またある鳥は枝で静かに羽を休めているといった風です。
これ程までに鳥や虫を色彩豊かに、生き生きと描いてある陶器は今までに見たことがありません。
1976年初夏、昭和天皇、皇后両陛下が日立多賀の菊池家に行幸された折、ただ一度の晩餐のために藤本氏が造った230ピースにのぼる揃いの食器は「幻の食器」と呼ばれていますが、それが一室に展示されており、「私の生涯において最も印象に残っている作品」と藤本氏が言われるように素晴らしいものでした。
死に近づいてからの作品の多くは、炎の回りを蛾が乱舞する様を描いたものが多く、命の残照の中で最後の力をふり絞って舞っている様に見えました。
「焔に舞う陶額」は、何匹もの蛾がメラメラと燃え上がる火焔に吸いよせられるように舞いながら落ちていく構図で、速水御舟の傑作「乱舞」を想起させ、いつまでも見飽きないものでした。
藤本能道は、平山郁夫の前の芸大学長で人間国宝です。
菊池寛美は、戦後の炭鉱、株による三大成金王といわれる人で、美術館はホテルオークラ別館のすぐ近くにあります。

6月 8, 2010 1.日々是好日 |