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2010年6月 5日 (土)

イチローの流儀〈6月〉

イチローの流儀

小西 慶三 新潮文庫

 2001年米大リーグに籍を移して以来9年、毎年200本ずつの安打を打ちつづけているイチローは、今や米大リーグを代表する選手になっています。
彼のサイン入りメジャーリーグ公式球は現在では1個500ドルを下りません。
マリナーズのレギュラーならだいたい80ドル前後です。
イチローと並んで最も地元で親しまれていたエドガー・マルチネスでさえ1個200ドルでした。
シアトルで行われた2001年オールスター公式球にイチローがサインしたものには1000ドルの値がつけられています。
 しかし日本のマスコミでの露出度は松井の方が圧倒的に上です。
これはスポーツ記者に対する対応の仕方に原因があります。
松井は個人専属広報担当者を持ち、取材には非常に協力的です。
試合が終われば毎日テレビカメラの前に立ちどんな質問にも丁寧に答えます。
これに対し、イチローはテレビカメラの前に立つことがほとんどありません。
キャンプ開始と開幕戦、そしてオールスターと目標の200本安打が達成された時とシーズン終了のときで、1年間にせいぜい6、7回しかありません。
新聞記者との会見には毎日応じますが、質問を持っている記者しか会見しません。
他人の質問を聞いてそれを記事にしようとしている記者は排除されます。
毎日誰にでも会って話してくれる松井の方に人気があるのは当然です。

有名選手も教えを請いに

 イチローは大リーグの選手のあくなき向上心に日米野球の違いを感じています。
2002年まだ大リーグに1年半しか在籍していなかった時、ボストン・レッドソックスの主砲マニー・ラミレスは、イチローに「カーブを打つ時に頭が動くことをどう修正するか」を教えて欲しいと会見を申し込んできました。
この年ラミレスは、メジャー10年目で初めて首位打者のタイトルを取りました。
同じ頃レイズのカルロス・ペーニャは「私はもっと自分の打撃を安定させたい。成績表をみれば、あなたが今のメジャーでだれよりも安定している。あなたの打撃と野球への取り組みを聞かしてくれないか」と申し込んで来て、3時間も話していきました。
 「日本にいた時、自分よりもずっと若くてキャリアのない選手がいろいろ聞いてくることはありましたが、ある程度キャリアを積んだ選手となると誰もいませんでした。しかしこちらでは、ロベルト・アロマーのようにもう3000本近く打っている人でも僕にいろいろ聞いてきた。この違いはいったい何だろう」
 他人に教えを請うことは、自信がなければ簡単ではありません。
たった一年半しかメジャー経験のない者に実績十分の強打者も、さあこれからという新鋭もアグレッシブに食らいついてきます。
誰もが少しでも上を目指そうとして。

6月 5, 2010 4.今月の本 |