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2010年5月 7日 (金)

安売り競争の行方〈5月〉

 どこの業界でも価格競争が激しく、値下げの勢いが止まりません。
ユニクロが990円のジーンズを出したときは衝撃の価格でしたが、その価格はたちまち一般化し、いまでは800円台のジーンズまでみられるようになりました。
凡そ30兆とも40兆ともいわれるデフレギャップ(需要不足)の下では、値下げをして、他社のシェアを食おうとする行動は個別企業の行動としては理解できなくはないにしても、こんな低価格が広がっていって、果たして小売だけでなく、メーカーも含めて儲かっているのか疑問です。
低価格にして利益を削っていけばだんだん体力を消耗し、最後には共倒れということにならなければよいのですが。
「安くなければモノは売れない」と思って必要以上に低価格で売っているということはないのでしょうか。
京セラの稲盛会長は「理想の価格は客が許してくれる範囲で最高の価格」であり、商品はコストで値付けするのではなく使う人がいくらだったら買ってくれるのかの“価値”で値付けをしなければならないといわれています。
果たして低価格に走る人達は、客が許してくれる最高の値段を求めた結果で値決めをしているのでしょうか。

安売りは麻薬、デフレは中毒

 首都圏でスーパーを展開する成城石井の大久保社長は「安売りは麻薬、デフレは中毒」と言われます。
彼の主張は次の通りです。
「今の安売りは『安くなければ売れない』と思いこんで、安いものしか売らない小売が招いたものであり、消費者がそうしてくれといった価格ではありません。
価格を下げれば一瞬は売上が伸びるけれど他社も追従するので、しばらくすると必ず売上は落ちてきます。        
麻薬のようなもので、いずれ効かなくなり、体がボロボロになる。
だけどやめられない。」
 安売りは、需要の先食いでしかありません。
価格を下げても消費量は増えないので市場全体は縮小します。
小さくなっていくパイを奪いあって、さらに値下げに走る。
利幅が薄くなってくると今度はコスト削減に走ります。
各社は目先の数字ばかり追いかけるから商品開発や調達、店舗管理といった能力が落ち、商品や店に魅力がなくなり、更に苦しくなるという悪循環に陥ります。
ディスカウント業界で生き残るのは上位3社といわれています。
価格競争の中に身を置いたら生き残っていけないのです。

 本来PB(プライベートブランド商品)は「品質が良くてお買得」な商品のことであるのに、最近はPBの多くは短期的な売上を追うために低価格にし、大量に作ってしまいます。
しかし粗製乱造だから消費者からは敬遠されて売れません。

 東急ストアもPB商品を乱立したため業績が低迷した企業のひとつです。
「PBアイテムで売上の3割を構成する」という2008年初頭の目標で、PBは、食品から衣料品まで2192アイテムにふくらんでしまいました。
これが売れれば広告宣伝が不要なだけに高い粗利益を確保できると想定していましたが、一気に作った大量のPBが消費者のニーズを反映している筈もなく、需要のないPBが大半を占め廃棄ロスの山ができてしまいました。
そこでPBの商品数をピーク時の半分にまで減らしたところ、売り場のスペースがガラガラになってしまいました。
社員はただPBを並べるだけで売り場を作っていたので、考えながら売り場をつくるという力をなくし、PBがなくなったら、そのスペースを何で埋めていいかわからなくなっていました。
収益力が回復するには2年かかると社長は予想しています。

 小売りはそれぞれの存在価値を見直さなければなりません。
今後は巨大なディスカウント店と特徴ある高付加価値店に2極化していきます。
しかしケチケチ経営では売り場がガタガタになってしまいます。
顧客の欲しがる高付加価値商品を扱う店を目指すべきです。
そのためには「人材作り」が大切になります。
小売りはヒトがヒトにモノを売る仕事だから、いい商品を生み出すヒトを育てなければなりません。

価格は自ら創るもの

 スーパー各社が減収減益に喘いでいる中、規模でははるかに劣る成城石井は好調です。
デフレでも販売単価は順調に上がり続け、3年で10%も上昇しました。
その間、増収、増益をつづけ、2009年12月期は売上、経常利益とも2ケタ増となり、4期連続の増収増益です。
成城石井の店頭に並ぶのは、オリジナルなPB商品です。
「成城石井のおとうふ」は300g279円と他のスーパーの2倍で、ハンバーグは他社が1個100円前後なのに石井のPBは3個で1150円。
世間の常識からいえば「高いものは売れない筈」なのに成城石井は高価格路線を維持しています。
これは「他社にないものを売る」という方針を貫いているからです。
商品開発の社員は日本だけでなく世界各地を飛び、こだわり抜いた商品を探し出してきます。
 「お客は多くの商品を試食できないので、我々が食べつくして最高のものを提案する。そこに客と店との信頼関係が生まれる。店がつけた価格を客は適正価格と信用してくれる。顧客の信用にデフレはない。」
消費者は価値ある商品を欲しいのであって、低価格の商品を欲しいのではありません。価格に見合った価値ある商品が欲しいのに、流通業者は低価格であれば売れると思ってしまったのです。
未だに物不足時代の発想からぬけきれていないのではないでしょうか。

5月 7, 2010 2.チャレンジ |