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2010年4月 6日 (火)

百貨店の凋落(ちょうらく)〈4月〉

 最近は百貨店の閉鎖が続いています。
2000年には310店程あった店舗数は09年には270店程に減っており、昨年も三越池袋店、今年は伊勢丹吉祥寺店の閉鎖があり、有楽町西武も3月に閉館が決まりました。
「おいしい生活」をキャッチフレーズに、西武が快進撃を続けていた頃開店した有楽町西武は当時の花でした。
あれから26年、赤字がつづき閉鎖ということになりました。

 2009年の全国百貨店売上高は24年振りに7兆円を割り込み、下落幅は1965年以後で初めて10%を越えました。
売上のピークだった91年と比較すると3兆円以上の売上が吹き飛んだことになります。
勝ち組と言われた伊勢丹の売上高も既に1年半にわたり前年割れが続いています。
三越伊勢丹の合計売上高は2007年の1兆5598億円、営業利益418億円から、2009年度には売上高は1兆2700億円、営業利益わずか20億円にまで落ち込む見通しとなっています。
その一方、博多や大阪では激しい出店競争を続け、互いに共倒れになるのではないかと危惧されています。

 他方インターネットの販売高は、既に全国百貨店売上高を抜いたともいわれています。楽天市場のスタートは1997年5月でしたが、09年12月期には出店社数3万1000店、売上高8002億円と、05年以来年率30%近くの高成長を続けています。
果たして百貨店は生き残っていけるのでしょうか
 2007年8月に「百貨店に行かない理由」を聞いたところ、行く頻度が年1回未満の人956人の回答は以下の通りでした。

価格が高いから             55.8%
百貨店でなくても購入できるから   39.9%
百貨店に欲しいものがないから    18.1%
敷居が高いから                 14.3%

価格が高く、欲しい商品がない

 第1に価格が高いからがあげられています。
リーマンショック以後この傾向は特に強くなっています。
そのため各社は通常はボーナス後の7月と1月に始めるセールを前倒しにして低価格品を投入するなど、割高とみられていたイメージを打破する方向に走り出しました。
エスカレーターの横で高級ブランドがセール開催を呼びかけるような光景も出てきました。しかし、セールをしても商品の単価が下がるので売上は必ずしも上向かないし、頻繁に足を運んでくれる上得意客がセールの混乱を敬遠して、通常価格の商品も売れなくなってしまいました。
 そもそもユニクロなどの専門店の売る低価格品は、製作段階からメーカーと協議し、周到に準備し大量に売り切ることにより、利益を獲得する商品です。
ユニクロの売れ筋のヒートテックなどは、昨冬は2000万枚、今年は4700万枚と桁外れの数量を売っています。
デパートのように一店で売る枚数を限り、付加価値を付けて売る商品とは違います。
デパートの商品が価格の安いもので埋まってしまったら、それこそ人はいかなくなるでしょう。
高い中に時々安い商品があるからこそ、安さの価値があるのではないでしょうか。
問題は高い価格に見合った価値ある商品かどうかということです。
衣料品メーカーの中には「百貨店の商品は高くしすぎていたのかもしれない」という会社もあります。

値段に見合った価値ある商品がない

 第2の理由、第3の理由は、実は「百貨店にしかない価値ある商品がない」という同じ事を言っています。
百貨店の多くの商品は、店頭にある商品が売れた時点で仕入を計上する「消化仕入れ」という特殊な取引形態をとっています。
店頭に商品が並んでいる段階では商品の所有権は取引先にあります。
たとえ売れ残っても百貨店側は在庫リスクを負う必要がないのです。
売ることも取引先が行います。
百貨店の売り場で商品を売っている人の7~8割は取引先の従業員です。
どんな品揃えをするかということは、本来は百貨店側が決めるべきものですが、多くは取引先任せになっています。
百貨店は自ら商品を仕入れて売るのではなく、単に仕入れ先に売り場を貸しているにすぎません。
仕入も販売も取引先にお任せなのですから商品知識の豊富なバイヤー(商品仕入担当者)など育つ筈はありません。
こうした長い間の商習慣が、百貨店に商品を見る力・売る力を失わせていったのです。
百貨店はパルコやルミネと同じ「場所貸し業」であるのに、多くの従業員を抱える小売業という曖昧な状態を続けていたため、高コスト構造になり、儲からなくなってしまいました。

スーパーやユニクロと同じ店舗展開では客はもどらない

 これからの百貨店は、様々なブランドを評価し、ブランドを組み合わせてフロアや店を作り上げるマーケティングや編集の能力を身につけなければ魅力のある業態をつくれないようになります。
このままではたとえ景気が回復しても百貨店には客は戻ってこないということになるかもしれません。
前身の呉服店まで含めれば、三越も高島屋も松坂屋も江戸から明治・大正・昭和と何回かの激動期を越えて生き残ってきました。
果たして今回の転換をどのように越えるのか、はたまた、越えられずに幾社かは沈んでしまうのか、注目して見守りたいものです。

4月 6, 2010 2.チャレンジ |