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2010年3月 6日 (土)

「考える力」と「正しい形」〈3月〉

 冬季五輪が終了しました。
日本選手の金メダルの数については五輪開始の前から四つとか五つとか、かしましい議論がされていましたが、、、。
マスコミは金メダルばかりを取りあげるので、銀や銅だと涙を流す選手もいますが、銅メダルだって世界で三番目なのですから、大変なものです。
もっと賞讃すべきだと思います。
メダルを取った選手の中にも、大会前からメダルの期待の高かった選手で実力通りの力を発揮でき期待通りのメダルを取った人、実力を発揮できず期待以下のメダルに終わった人、また、メダルを取れなかった人もいます。
逆に大会前には、それ程期待されていなかったのに、大会では実力以上の力を発揮し、メダルを取った人がいます。
どうしてこうした差が生まれるのでしょうか。
一般的に日本人は実力以上の力を発揮する人よりも実力を十分に出し切れずに終わってしまう人の方が多いようです。

 世界で勝つには、どんなに力を持っていてもそれ以上に何か別の要素が必要なのかもしれません。
 日本女子体操監督の塚原千恵子氏は世界で勝つには「強い選手」でなければならないと語っておられます。
体操というと男子体操が思い浮びますが、女子体操も昨年は17歳の鶴見虹子選手が世界選手権の女子総合で銅メダル、段違い平行棒で銀メダルを獲得し、女子体操界には43年ぶりの快挙となりました。
その女子体操を36年間監督として指導し22人の五輪代表選手を育ててきたのが塚原氏です。(男子体操の塚原とびの塚原氏の奥さん(旧姓・小田)。男子体操の塚原の母親)
 本来持っている力を結果に結びつけるには必要なことが2つあるといわれます。

「考える力」をつける

 1つ目は「考える」選手であることです。
その時々で今何をすべきか。
試合のために普段から、その時点、そして次の時点で何をするか。
状態が悪かったらどう変えていけばいいか…。
物事を確実に進めていくには…。
そうした「考える」力が必要だといわれます。
指導者であっても実際の試合の際に、選手の心の中までは支えられません。
難しい場面に遭遇したときに、どうするかを決めるのは選手自身です。
その時に「考える力」があるかないかが試されます。
 鶴見選手が銅メダルを取ったとき、最後の種目となった跳馬で非常に難度の高い後方伸身宙返り2回ひねりに挑戦するかどうか決断しなければならない場面がありました。
うまくできれば金メダルもあり得る。
でも直前の練習の感触では難しかった。
どうするか―難しい判断でしたが彼女は自らの状態を冷静に見つめて、難度点が少し低い1回ひねりを選んで確実に3位を勝ち取りました。
 それでは「考える力」はどうすれば育つのかが問題です。
それには、いつでも、どこでも「どうすべきか」「どうしたらもっと良くなるだろう」と考える習慣を身につけることが大切です。
それには、教えられたことをただ忠実にやるだけではダメです。
教えられたことを「どうしてそうなんだろう」と考え理解したうえでやることが必要です。
それには積極性が不可欠です。

 水泳の北島選手のコーチである平井伯昌氏のもとには外国人選手が教えを請いに来ることが増えてきています。
北京五輪男子100m平泳ぎ銀メダルのノルウェーのアルクサンドル・ダーレオーエン選手もその一人です。
南アフリカ共和国のキャメロン・ファンデルバーグ選手は「技術を教えて欲しい」とやって来て、帰国後も練習メニューのメールのやり取りをしつづけた結果、世界選手権の50m平泳ぎの世界新記録で金メダルを獲得しました。
彼らは「何が何でも最高水準の泳ぎの技術を学びたい」「世界のナンバーワンになりたい」その一心で、自費でやって来ます。
それに比べ日本の選手は、コーチが手取り足取り教えて当たり前という受身の姿勢や、教えてもらうことが当然の権利だと言わんばかりの態度が見られ、それに違和感を抱くことさえあると言われます。
しかし、受け身や当然の権利だという態度からは、こうした「考える力」は身につきません。
「どうしたらいいだろう」「どうしたらうまくなるのだろう」という積極性があってこそ、教えられたことの意味は理解でき、それを自分のものにすることができるのです。

 2つ目は「正しい形」を徹底的に覚えることです。
本番になると緊張して力をだせない人もいますが、これは「正しい倒立や回転といった基本の正しい形を体に覚え込ませていないからです。
体が覚えていれば緊張していても力は出せます。
正しい基本を身につけていれば体が自然に動いてくれるものなのです。
勝利の道は基本にあると塚原氏はいわれます。
「稽古とは一より始まり十を知り、十より返るその一」とは千利休の言葉ですが、まさにその一である基本を身につけることが実力をつけ「強い選手」になるためには不可欠であることを氏は言われているのだと思います。
 ビジネスの場でも中小企業が弱いのは「正しい形」を持っていないからだと思います。
従業員ひとりひとりが皆異なった形で動いています。
「正しい形」をもって動いているところはほんの少数です。
そんなところはこの不況の中でも十分に儲かっています。
 「強い企業」になるのは「強い選手」になるのと同じです。
「正しい形」をつくり、皆が正しい形を訓練により身につけ「考える力」を持つようになれば「強い企業」になることはごく当然のことと思います。

3月 6, 2010 2.チャレンジ |