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2010年3月 5日 (金)

庶民への大学門戸解放策の失敗…イギリス〈3月〉

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 大学に通えるのが中流階級と上流階級だけというのはおかしい。
高等教育の大衆化を加速化すべきだ ― イギリスで90年代後半に誕生した労働党政権は大胆な目標を掲げました。

 当時トニーブレア首相は向こう20年間で高卒者の大学進学率を50%に引き上げ新入生の数を10万人以上増やすことを提言。
特に貧困家庭をマイノリティー出身の若者の大学進学率を上げることが重視されました。
全ての進学希望者が大学まで学べる理想的な教育環境が実現する…はずでしたが現実はそれ程甘くはありませんでした。

 数字だけ見れば大学改革は一定の成功を収めたかのように見えます。
改革着手前の1998年イギリスの大学の新入生は32万9000人でした。
これに対して09年の全日制大学の出願者数は59万2000人に達し17万人も増加しています。
しかしその結果、問題点も出てきました。

 大学は学生層の拡大に伴い科目を大幅に増やしてきました。
その中には「パン焼き技術」など学問とは言い難い授業もあります。
教員は入学者の増加と入学条件の緩和による学生の水準の低下に悩んでいます。
学位取得に必要な基本的知識を身につけさせるための補習に多くの時間がとられるとケント大学のフランク・フレディ教授(社会学)は嘆きます。
今や本格的な高等教育が始まるのは大学院からです。
入学者を増やしつつ、従来通りの教育水準を保つのは極めて難しいと上記フレディ教授は言います。
大学を卒業したからといって必ずしも十分な教育を受けたと言えないのが実情です。

 入学者を増やして学生の出身階層を多様化するという目標も達成されていません。
今もイギリスの名門大学では金持ちの子弟の合格率は最貧困家庭の出身者の10倍あります。
更に労働者階級の子弟が多く通っている非名門大学では1年を終えた時点で退学する学生が15%を超えるところもあります。
高等教育を受けた者が希望するような働き口が不足しており、昔なら高等教育を受けた者が就かなかったような仕事に就く大卒者が増えています。

3月 5, 2010 3.スクラップ |