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2010年2月 6日 (土)

旭山動物園〈2月〉

 人は生まれて3度動物園に行くそうです。
  1回目は 親につれられて   
  2回目は 子供をつれて
  3回目は 孫をつれて
 全国の動物園のうち、入園者数300万人をこえるのは上野動物園だけで、200万人の入園者数は大都市の大型動物園の「ゆめ」だといいます。
この200万人の大台を突破したのは、上野動物園以外では名古屋の東山動物園、横浜の野毛山動物園、横浜のズーラシアと旭川の旭山動物園の4つしかありません。
旭山動物園は06、07年には300万人を越えました。

旭山動物園に出す金はドブに捨てるのと同じだ

 一般に公立の動物園の入園者数はその所在地の都市の人口程度あればよいとされています。
旭川市でいえば36万人です。
しかし現在、旭山動物園はこれを8倍も越える入園者数で、奇跡に近い数字です。
旭山動物園は日本最北の動物園であり、1年の半分近くは雪に閉ざされており、上野動物園のパンダのような「珍獣」もいません。
150種近くいる動物はどこの動物園でもみることができます。
 旭山動物園もどん底の時期がありました。
1983年に年間入場者数が59万人のピークに達した後、96年にはその半分以下の26万人にまで落ち込みました。
議会では「動物園に出す金は、ドブに捨てるのと同じだ」ともいわれる位の扱い方をされました。

動物園は野生動物の命を感じる場所

 旭山動物園をどん底から引き上げたのは、動物園再生を願う現在の園長を中心とする少数の職員でした。
改革は常に内から始まります。
 先ず第一に考えたことは「動物園の存在意義は何か」ということです。
喜んでもらえればいいというのでは、買い物をするチンパンジーや立ち上がるレッサーパンダを作ればいい。
しかしそれでは本物の動物を感じることはできません。
動物園は面白くないという人がいます。
それは何故だろうか皆で考えました。
そして彼らが辿りついた結論は「動物園は野生動物の命を感じてもらえる場所である」ということでした。
そのためには、イルカのショーやアザラシのショーを切り捨てて、徹底的に野生動物の命を感じてもらう場所にするということです。
この命題がその後の旭山動物園の方向を決します。
今でも基本スタンスは朝礼や勉強会の都度、確認し徹底しています。

ワンポイントガイド、手書きポップ

 次に考えたことは「野生動物の命を感じてもらうために」職員は何をしなければならないか、動物たちを通して何を見せ、何を訴えるべきかということです。
 飼育係にとっては動物の表情や行動が面白くてしょうがないのに、何故客はそう感じないのかと考えました。
その結果「客は動物の面白さを知らないからだ」という結論に至りました。
 そこで出されたアイデアが、動物舎の前で自分が担当する動物の説明をする「ワンポイントガイド」です。
それぞれの動物を誰よりも知っているのは飼育係ですから、その知識の一部を披露すればお客にとって面白いだろうと考えました。
しかし、常に反対者もいます。
「自分は口下手だから飼育係になったのに、しゃべるのは嫌だ」「説明するのは飼育係の仕事ではない」といいます。
皆が納得してスタートするのに半年かかりました。
しかしこれをすることによって、大人も子供も動物に関する知識がかなり少ないことや、彼らが何に興味を持つかなどということがわかりました。
 「手書きポップ」も彼らから出たアイデアの一つです。
通常、動物園のパネルは印刷してあります。
しかし当時の旭山動物園にはそれを作るだけの予算がなかったので、飼育係が直筆で書き、定期的に書き換えるようにしました。
動物が生まれたということやペンギンが子育てをしていますという最新のニュースや、トラのしましまはシカの目で見たらどう見えるかというようなことを書きました。
お客様が読んでくれる率が高くなりました。

野生動物の息吹を感じるか

Photo_4   人気の「ペンギンの散歩」はペンギンが餌を求めて集団で移動する習慣があることを利用したものです。
冬の閉園時期、ペンギンが外に出たがっていたので外に出したのが始まりで、それが「冬期開園」の目玉になってしまいました。
 「夜の動物園企画」も昼間は寝ていて動かない夜行性の動物が敏捷に動き回る姿を堪能できるように考えたものです。
 このような職員たちのさまざまな取り組みによって、少しずつ入園者が増えだし市の見方も変わって施設予算がつくようになりました。
施設をつくる時も、どうしたら「野生動物の命を感じてもらえるか」という視点にたって考えています。
水中トンネルのアザラシ館やペンギン館、ほっきょくぐま館も全て野生の彼らの最も野生的な部分を表現できるように造ってあります。
 旭山動物園再生のストーリーは、まさに企業再生のストーリーです。
会社は何のためにあるのか。
顧客にとってどのような意味を持つのかの軸を明確に定めることが第一です。
次にそれを実現するためには何をすべきかを徹底的に詰め、地道にそれを一つ一つ実現していく、そうした行為の積み重ねの結果、その成果が徐々に実を結びはじめ、ある時期に至って爆発的に開花するという企業再生のストーリーです。

2月 6, 2010 2.チャレンジ |