« 先を読む頭脳〈2月〉 | トップページ | 旭山動物園〈2月〉 »

2010年2月 5日 (金)

忘れたころに帰ってきた悪魔「結核」〈2月〉

102070
 貧困国の保護問題に世界の目が向けられてから約10年、その活動はそれなりの成果を挙げてきました。
マラリアの深刻な地域では00年以降、感染者数が半減したし、エイズ治療薬を手に入れられる人もこの5年で10倍を超えました。

しかし放置されてきた感染症に「結核」があります

 結核菌は古代エジプト人のミイラからも検出されており、今でも毎日5000人の命を奪います。
これは09年に発生したH1N1型インフルエンザのこれまでの死者数を超えます。
そして今、結核菌は私たちの手に負えない程強力になりつつあります。
 ヒト型結核菌に初めて有効な治療薬が登場したのは1944年でした。
それ以来結核菌は次々と新しい薬への耐性を獲得してきました。
そして90年以後結核菌は複数の薬剤に対して耐性を持つ多剤性結核菌(MDR-TB)となり、更に最近では、ほとんどの抗生物質に対して耐性を示す超薬剤性結核菌(XDR-TB)も確認されるようになってきました。
 WHOのチャン事務局長は、迅速かつ断固たる行動をとらなければ、人類は結核が不治の病だった「抗生物質発明以前の時代」に逆戻りする可能性があると警告しています。

エイズとの資金獲得競争に敗れる

 人類の約3分の1は結核に感染しています。
しかし健康な人は、普通は体内に入った結核菌を免疫力で処理してしまいますし、生き残った菌も長い休眠状態に入りますので、ほとんどの人は自分が結核に感染したことさえ知りません。
しかし、エイズウィルスなどに感染するなどして免疫力が落ちると、眠っていた菌が目を覚まして肺や肝臓などで暴れ始めます。
エイズ感染者はそうでない人に比べて、結核を発症する可能性が、20~30倍も高いのです。
 エイズ発生以前は世界の関心はもっぱら貧困国の衛生状態の改善に向けられていたのに、エイズ拡大により先進国の援助はエイズ対策用の資金や技術に集中してしまいました。
その結果、HIV剤の供給量が10倍に増える一方で、結核治療薬の供給体制は全く改善されず、結核はエイズ患者の死因として圧倒的な1位となり、アフリカとアジアのエイズ患者は薬物耐性結核菌の温床となってしまいました。

 世界は結核の爆発的流行に向っています。
「結核は不治の病になる可能性がある」とWHOの結核対策部門長は言います。

2月 5, 2010 3.スクラップ |