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2009年12月 6日 (日)

ありがた迷惑な「世界遺産登録」〈12月〉

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 バロック様式の建築で名高いドイツの古都ドレスデンは第二次世界大戦の空爆で大きな被害を受けましたが、復興の努力の甲斐があって、エルベ川流域の景観が観光客の目を楽しませていました。
ドレスデンは04年に世界遺産に登録されましたが交通渋滞が激しいためエルベ川に4車線の橋を架けることが2度の住民投票ので決まり、ユネスコは6月「ドレスデン、エルベ渓谷」を世界遺産リストから抹消しました。
72年に世界遺産条約が採択されて以来、抹消されたのは、石油採掘のため自然保護地区を90%縮小したオマーンの「アラビアオリックスの保護地区」につづいて2件目です。

 世界遺産に登録されると観光ブームにつながるため、多くの国が世界遺産の登録に熱意を燃やしています。
登録を目指す各国政府や地元の産業界にとり、世界遺産は無名の土地を観光スポットに変えるマーケティングツールです。
中国雲南省の麗江の旧市街は97年の登録以来、年間観光客が10年間で170万人から460万人に増えました。
カンボジアのアンコールワットも1万人に満たなかった年間観光客が92年の世界遺産登録をきっかけに、100万人以上に激増した観光客に対応すべく、町は拡大の一途を辿っていますが、さらに地元のホテルが遺産の地下から水を汲みあげているため、遺跡自体が危機にさらされています。

 現在、登録済みの世界遺産は900件程あり、今後も増えつづける見込みです。
途上国では世界遺産に登録されることで自然や遺跡が破壊される懸念が高まっており、環境保護派の間では、自然や遺跡の保護のためには世界遺産に登録しない方が得策だという声も上がっています。
世界遺産センターの台所事情は非常に厳しいものです。
職員は100人未満で、歳入は寄付を含めて2000万ドル程度です。
遺産の保護に苦労する貧しい国々を助けたくとも、まるで力がありません。
センターには10倍の資産が必要です。

 過去5年でユネスコは100件以上を世界遺産に登録しました。
登録増加のペースが速すぎるという批判もあります。
しかし一部の国にとって世界遺産の登録件数は勲章のようなもので、イタリアとスペインは最多国の座を賭け長年しのぎを削っています。
こうした争いを封じるためユネスコは一国につき推薦件数を年間2件に制限しましたが、世界遺産の価値が揺るぎはじめたのは確かです。

12月 6, 2009 3.スクラップ |