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2009年9月 6日 (日)

長崎県立清峰高校の選手の育て方〈9月〉

049_2 1969年生。山梨学院大学卒
2001年長崎県立清峰高校野球部監督就任。
2005年甲子園初出場。2009年甲子園初優勝。
社会科教師。3年生担任

Photo_2  8月は高校野球の季節です。
今年91回になりますが高校野球熱は高まりこそすれ、衰える兆しはありません。
私も中学、高校の頃は夏休みのこの時期になるとテレビにかじりついて熱戦を観戦したことを思い出します。
その頃は超高校級のピッチャーなどというと、自分とは大分違うオジサンのような感じがしていましたが、最近たまに見てみると、皆かわいらしく、初々しく見えます。

 長崎県立清峰高校は今年の出場は逃しましたが2009年春の選抜高校野球では長崎県勢で初の優勝をしました。
清峰高校は、かつては県大会の第1回戦で姿を消していた高校でした。
そんな高校の野球部の監督に就任した吉田洸二監督は5年目の夏に甲子園に初出場し、強豪校を次々に破って旋風を起こし、2009年春、ついに優勝しました。
清峰高校のある佐々町は人口1万3千人の小さな町で、隣接する佐世保市の中学卒業生が大部分です。
54人の部員全員が県内出身者で「野球留学」などとは全く無縁の普通の県立高校です。
 こんな高校をわずか五年で優勝に導いた吉田監督の選手育成法は、特別に取り柄のない人間を集めて仕事を進めていかざるを得ない我々中小企業にとっても参考になります。

1.レギュラーよりも、控えの選手とコミュニケーションを多くとる。

 これは部員全員が同じ目標に向って進み、一人一人が自分の持ち味と能力を発揮しなければチームが強くならないからです。
普段の練習も控えの部員のテンションが低いと活気が出ません。
レギュラーだけで頑張ればいいという雰囲気が広がるとチームの勢いが失われてしまいます。
勢いというのは、曖昧で漠然としているのですが、これがないと優勝はできません。
勢いをつけるには全員の参加が欠かせません。
京セラの稲盛氏も「会社の社員は会社の基本理念を共有してくれないとどんなに優秀でも役に立つ人材にはならないので、京セラの理念に反対の人とはじっくり話し合って同意ができなければ辞めてもらうようにしている」といわれています。
全員が目標に向って進むことは、強くなるための欠かせない要素だということです。

2.部員は監督の鏡

 生徒が集中して練習にとり組んでくれないのは、生徒が悪いのではなく、自分が立てた練習のメニューに原因があります。
「何で選手は頑張れないのだろう」ではなく、「何で選手を頑張らせることができないのだろう」と考えて先ずは自分が反省するようにしています。
そうするようになってから選手が見えるようになり、選手も練習に積極的に参加するように
なりました。
部下は上司の鏡といいます。
部下が動いてくれないのは、上司の言動に原因があるということであり、部下に文句をいう前に自分をまず見つめ直すことが先だということです。
仕事の与え方はいいのか、指示の与え方は適切なのか、チェックを欠かしていないかなど、私達自身を見つめ直すと、部下を攻める前に自分が反省しなければならないことが数多くあることに気づかされます。

3.外の出身者は1人もいない

 甲子園に出場してからは県外からも入学したいという問い合わせがありますが、県内出身者だけの方が甲子園の優勝に近づくと考えて断ります。
プロではなく高校野球なので力の突出した選手がいるよりもチームとしてまとまりのある方が強いのです。
県内出身の子供たちを育てて、部員全員の気持ちが一つにまとまり易いチームを目指した方がいい。
手作りのおらが町のチームの方が甲子園に行った時に県民から受ける応援も大きくなり、それを勢いに変えることができるからです。
今年高野連の会長に就任した奥島孝康氏が、各高校の監督から県外出身者の野球留学を認めてくれという声が圧倒的に多いことにビックリしたと言われていましたが、「優秀な人材が入ってこない」といつも言っている方々にとっては吉田監督の話は耳の痛いことです。
中小企業は凡人を集めて、どう経営していくかということを問われているのだと心を決す
るしかないということなのでしょう。

4.課後の練習の半分は生徒達のやりたいことをやらせる

 これは自分で考える癖をつけさせるためです。
始業前の朝の練習では、選手に求める基礎体力に到達するまでの基礎体力を作るために、生徒達には有無を言わさず、ひたすら走らせます。
しかし、放課後の練習の半分は、朝の練習が終わったあとに「何を練習したいか」を聞いて本人の選んだ練習をさせます。
これは自分の人生の中で最も学力が伸びたのは、周りに言われてではなく、自分で「やらなければ」と思って一念発起した時だったので、練習にも選手の自主性を取り入れました。
こうすると練習の半分は自分で決めて取り組んだのだから、負けたら自分の責任だと思い、負けた教訓を自主的にその後の練習や次の試合に生かそうとするし、勝ったら、自分達の力で勝利したと自信をつけるのです。
これを始めてから試合を行うたびに強くなっていくことに気づきました。

 一つ一つを読んでみると、なるほどと思うことばかりです。
平凡な人間を集めた集団を強くしていくための方法はいろいろありますが、吉田監督が採った方法もまた十分に参考にできるのではないかと思います。

9月 6, 2009 2.チャレンジ |