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2009年6月 7日 (日)

イチロー新記録〈6月〉

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 イチローが、張本勲氏の持つ日本プロ野球記録の3085安打の日本記録を破りました。張本が23年間で打った安打数をイチローは17年で抜いたことになり、改めてイチローのすごさを感じます。
試合後「張本さんが見ていた景色はどんなものか。頂に登る景色を感じてみたかった。すごく晴れやかな感じでいい景色。一区切りついた。」と語っています。

 張本とイチローには接点があります。
イチローは入団して3年目、1994年に210安打を打ちました。
その翌年、4年目の春、東京ドームで顔を合わせた張本は「オレの記録を抜くのはお前しかいない」と語りかけました。
イチローは「何を言っているのかこのオッサンは」と思ったそうです。
 イチローと張本という超一流打者の記録に向わせた思想と行動にはそれぞれの時代の空気が色濃く反映されていて好対照をなしています。

■生活のための張本

 張本の原動力は、同時代の成功者の多くがそうであったように「生活のため」でした。
腹いっぱい食うには打つしかありません。
母をトタン長屋から解放するために一本でも多くのヒットを求めました。
広島の原爆で姉を失い、自分も右手を大ヤケドするハンディを負いました。
そんな逆境や貧困を人一倍の負けん気で跳ね返しました。
「野球が駄目なら生活が駄目になる。必死で戦ってきた。理由はそこです。」と張本はいいます。
戦後の混乱から高度成長期にかけ、猛練習で道を開いてきました。
「野球とは生活そのもの」であり、彼は野球を生活の糧として、日本の激動期を生き抜いてきました。

■野球が好きだからのイチロー

 一方豊かな時代に育ったイチローの原動力は、生活のためでもお金のためでもなく「面白いからやる」です。
イチローがしゃべった短い言葉を集めた「イチロー262のメッセージ」(ぴあ2008年)を読むと、彼の面白いからやるということが、どういうことかわかります。

■キレイ、スゴイと感じられるプレイをしたい

 『記録や数字はどれだけ野球が好きかということの結果であり、練習をするのは仕事としての責任のために練習しているのではなく、野球が好きだから練習します。
記録を目標にすると達成したあと満足し、野球をやめなければならなくなるので、年間200本以上の安打を打つという目標以外、記録を目標にしません。
常に更に上を目指し、野球を真剣に続けていけば、もっと先には今の自分とは違う自分がある筈だと考えて野球をしています。
もし野球を好きだという気持ちがゆらいでいたら、どこかで終わってしまっていただろう。野球を生活の手段と考えると、練習しつづけるモチベーション(動機づけ)になりにくいので、そうしないように心掛けています。
だからプレッシャーがかかってもそれから逃れずに、それに立ち向かって克服しないと何も超えることはできません。
逆に、常に期待と重圧を受ける選手でありたいと願っています。
もがいても、もがいてもダメな時もあるけれど、そんな時こそ自分に重荷を課します。
よく、“長くやっているのにケガをしませんね”といわれますが、僕もケガはしています。
試合に出ているので気がつかないだけです。
プロ野球の選手になったのは、プロ野球の選手がカッコよかったからです。
少年時代、カッコイイと思えたのは野球選手だけでした。
だから今でもプロ野球の選手としては勝つだけでなく、キレイだ、スゴイな、と感じられるプレイをしたいと考えています。
イチローでいる時は強く、美しく、しなやかでいたいと考えています。
だから、くやしい気持ちもうれしい気持ちも見せたくないので演技をしています。
良くホメられますが、ホメられた時は“ああこれは悪魔のささやきだ”と考え、チヤホヤされたときは、いつも自分を戒めるようにしています。』

 ハングリー精神をテコにした張本に対し、イチローは自分を客観的に分析し、次の行動を明確に決めます。
地道な繰り返しを支えるのは克服と発見の喜びです。
面白いという姿勢で取り組めば、そこに限界はありません。
張本は「一番すごいのはあの精神力。今の人はすぐお腹が一杯になる。彼は全然ちがうね。あれだけの富を得て、なおかつあれだけの数字を重ねていくのだから、本当にすごい」といいますが、「生活のため」の張本と「面白いから」のイチローとの対比が出ていて興味があります。
 イチローの心境は張本にはとても理解できない、もっと先にあるのではないでしょうか。

 私達も仕事をしていて「仕事が面白いから」と言えるようになれば、仕事は苦痛ではなくなります。
仕事が苦痛である間は、その仕事は「したくない仕事」であり、それは「生活のため」であるといえましょう。
仕事が面白くなってはじめて、仕事は順調にいくのかもしれません。
否、どんな問題が起こっても前向きに対処できるようになるのだと思います。
仕事が苦痛かどうかは、私達の仕事に対するリトマス試験紙になりそうです。

小学校6年生のときのイチローの作文~~~~~~~~~~

 僕の夢は一流のプロ野球選手になることです。
そのためには中学、高校と全国大会に出て活躍しなければなりません。
活躍できるようになるためには練習が必要です。
僕は3才のときから連習を始めています。
3才から7才までは半年ぐらいやっていましたが、3年生の時から今までは365日中360日は激しい練習をやっています。
だから一週間中で、友達と遊べる時間は5、6時間です。
そんなに練習をやっているのだから、必ずプロ野球の選手になれると思います。
そしてその球団は中日ドラゴンスか西武ライオンズです。
ドラフト1位で契約金は一億以上が目標です。
僕は自信があるのは投手か打撃です。
―中略―
 僕が一流の選手になって試合に出られるようになったらお世話になった人に招待券を配って応援してもらうのも夢の一つです。
とにかく一番大きな夢は野球選手になることです。

6月 7, 2009 2.チャレンジ |