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2009年4月 6日 (月)

因果倶時(いんがぐじ)〈4月〉

 食後の飲み物といえばコーヒーと紅茶があります。
私は紅茶を選びますが、コーヒーを選ばれる方のほうが多い様に思います。
昔はコーヒーを飲ませる喫茶店は至るところにあり、そこにはコーヒーにこだわりを持つマスターがいたものです。
最近はそんな個人の経営する店はごくわずかになり、スターバックスとドトールに代表されるフランチャイズのチェーン店がほとんどを占めるようになってしまいました。
そのドトールの社長、鳥羽博道氏が日経の2月の「私の履歴書」に登場しました。
これを読むと、彼の成功因が読み取れます。

コンセプトの明確化

 第1の要因は、物事を始める時には必ずその意義、目的、コンセプトを明確にして取り組んでいることです。
勤めた会社が喫茶店の直営店を出したとき、19才の彼が店長を任されました。
その時「喫茶業が世に存在する意義とは何か、何の為に喫茶店はあるのだろうか」と考えました。
出した答えは「一杯のコーヒーを通じて、人々に安らぎと活力を提供すること」ということでした。
安らぎと活力を提供するものは何かと考えていたところ、たまたま丸善で見た色彩心理学の本に「クリーム色は心理学上母性に似た愛情を示す」と書いてあったので、薄暗い店が多かった当時、カウンターのバック棚をクリーム色にし、壁は茶褐色にしました。
そして、ひたすらお客様に喜ばれる事をしつづけた結果、半年で軌道に乗り、1年で大成功を納めました。
 1962年24才でドトールコーヒーを創業し、三軒茶屋「カフェ・コロラド」1号店を開店したときは「健康的で明るく、老若男女ともに親しめる店」というコンセプトの店にしました。
当時の喫茶店は主婦や高校生は入店できないような不健康な店ばかりでした。
名曲喫茶やジャズ喫茶の他に、美人喫茶や同伴喫茶など風俗まがいの店もかなりありました。
その頃大学生になった私は初めて喫茶店というものに入り、薄暗い変なところがあるものだなと思ったことを思い出します。
 「老若男女ともに楽しめる店」にするため、スプーン一つ、カップ一つに至るまで微にいり細に亙り(わたり)追求し、メニューも老若男女に受け入れられるものになるよう気を配りました。
三ヶ月を過ぎた頃から店は一気に人が入りはじめ、大成功を納めました。

次の時代の見極め

 第2の要因は次に来るべき店の像を追い求めつづけていることです。
コロラドを始めた1970年代の前半、日本経済は高度成長の真っ只中にあり、コーヒーの値段は毎年上がり続けました。
この値上がりはいつ迄受け入れられるだろうかと不安になると、喫茶店業や焙煎業の将来が気になり出します。
次の時代に来るものを見極めようと参加した欧州ツアーでパリにある立ち飲み店を目にし、そこに喫茶業の最終形態を見出します。
またドイツのコーヒーチェーン「チボー」にある挽き売りのコーナーを見て、日本でもコーヒー豆を家庭で消費する時代が来るのを感じとります。
 その成果は1980年代の第一次石油ショックの時、サラリーマンを助けようと始めた「立ち飲みコーヒー」の開店に生かされます。
立ち飲み店のコンセプトは「さりげなく小粋、立って飲むことをファッションにする」とし、立って飲むことがカッコイイという状況を作り出す様に考えました。
そのためコーヒーの値段は150円とその頃の価格の半額にしたのに、人の心を豊かにとの思いから、カップは一つ2300円、スプーンは1700円の高級品にしました。
当時、カップ、スプーン共に200円が一般的でした。
この店は大成功を収めました。
チボーに見た挽き売りのコーナーは、今のドトールに生かされています。

フランチャイズ店との共栄

 第3の要因は、フランチャイズ店とのトラブルがないことです。
喫茶業に進出した出発点は「人の不幸をつくらない」「オーナーの喜びは自分の喜び」ということでしたので、マニュアルや契約書にはこだわらず事情に合わせて対応してきました。不振店は店の魅力、商品の魅力、人の魅力に欠けています
努力や魅力の基準を高めてもらうためには率先垂範を心掛けました。
社員と共に不振店に行き、店の装飾物を全部外し、徹底して掃除します。
外観の塗装をやり直し、壁や床、椅子も磨きこみ、その上で絵、花、置物、椅子を置き直し、商品も並びかえます。
店が見違えるようになると、翌日から売上が上がり出します。
オーナーは感激し、心の持ち方を変えます。
このように不振の店一軒一軒、自分で出掛けて清掃するうちに、社員もそのようにするようになり、不振店は少なくなりました。

因果倶時(いんがぐじ)

 生きていくうえで心しているのは「因果倶時(いんがぐじ)」ということです。
「原因と結果は必ず一致し、未来の結果も今日の自分の積み重ね」という釈迦の言葉です。
「現在の果を知らんと欲せれば過去の因を見よ、未来の果を知らんと欲すれば現在の因を見よ」です。
現在の自分は過去の積み重ねの中にあり、将来の自分は現在の一日一日の積み重ねの中にあります

 先ずコンセプトを作り仕事を始め、常に次に来るべきものを探し続けながら、一日一日を確実に積み重ねていけば、大きな成果をあげるのは、宜(むべ)なるかなと思います。

4月 6, 2009 2.チャレンジ |