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2008年12月 6日 (土)

マーケティングは「愛」〈12月〉

 今から25年位前になるでしょうか。
㈱船井総研の船井幸雄氏が今のように神がかり的なことをいわないで熱心にコンサルタント業をやっていた頃、京都の都ホテルで行われたセミナーに出席したことがありました。
当日のゲスト講師は慶應大学の村田昭治氏でした。
氏は開口一番「今日入口で“あっ先生”とホテルマンに声を掛けられました。慶応の卒業生でした。彼は明日私からのハガキを受取るでしょう」と言いました。
村田氏は毎日顔を合わせて、話した人全てにハガキを出すとのことで、平均すると1日に15枚程にもなると話されていました。
その時この先生はすごい人だなと思ったことを覚えています。

日本の商業を悪化させた能率、マニュアル、標準化

 村田教授は、戦後日本の商業を悪くしたものは「能率」「マニュアル」「標準化」だと言われます。
商売に多くのムダがはびこっていた時代には、これらが“3種の神器”となって、差別的優位をもたらしました。
コンビニが成長したのは、まさにこの3種の神器のお蔭です。
しかしどこの企業もこの3種の神器を追求していった結果、個性のない店が蔓延し、どの店も同じようになってしまいました。
 「能率」UPはアウトプット(生産)を一定にしてインプット(投入)をどこまで減らせるかということであり、インプットを一定にしてアウトプットを最大にすることではありません。
能率UPを考える際にはどの水準のアウトプットを求めるかが最も大切なポイントになります。
低すぎる水準にアウトプットの目標を定めると他社に負けてしまいますし、高すぎる水準に目標を定めると達成が困難になり、インプットを減らすことができなくなります。
いきおい目標は現在より高いけれど、頑張れば達成可能な水準に設定されるので、各社の目標水準は似かよったレベルになる傾向があります。
一度目標が設定されると、その水準を達成するためにどこまでインプットを減らせるかに努力が集中されます。
トヨタの「カイゼン」運動は、まさにこの一定の水準の目標に対してどこまでインプットを減らせるかのムダ省きの活動です。
しかしトヨタが他社に勝っているのは、その水準を毎年毎年上げつづけていることです。
その結果トヨタの水準は常に他社を上回り、差別的優位をもちつづけることができます。

 製造業の場合、この目標水準とその達成度合いは数値で示されるので「能率」の追求は比較的容易です。
しかし商業の場合、目標を数値で表せるものと表せないものがあります。
たとえば欠品率を下げるとか、注文があって10分以内に食事を出すというようなことは数値目標を出すことができます。
そしてその目標を達成するために作業を「標準化」し「マニュアル」をつくることもできますし、その成果を数値で測ることもできます。
しかし接客レベルを上げるということになると目標の設定は難しくなります。
たとえばお客様がいらっしゃったら、お客様に挨拶をするというようなことになると「マニュアル」と「標準化」の出番となります。
たぶん「お客様の顔を見て、45度の角度に上半身を曲げて、いらっしゃいませという」という具合に定められ、全員がそのように言っているかというようなことで達成率が測られることになるでしょう。
その結果どこの百貨店に行っても飲み屋に行っても挨拶は昔に比べてよくされるようになったという気がしますが、どこで聞く「いらっしゃいませ」も一様に事務的で冷たく、テープレコーダーの声を聞くようです。
本当によくいらっしゃいましたという気持ちが感じられないのです。
そこで「標準化」した「マニュアル」の中に「気持ちを込めて」と規定していますが、商売に喜びを感じてなければ気持ちを込めることはできません。
     
「商いの心」が消えた日本

 こうなってしまったのは、日本から「商いの心」が薄れ、経営者自身が商売に愛情を失ってしまったからではないでしょうか。
商売に愛情を持っていなければ「マニュアル」と「標準化」によって「能率」を追求していれば、商売は皆、無味乾燥なものになってしまい、どこの店も皆同じようなものになってしまいます。
三種の神器も必要ですが、それには「商いの心」がこもっていなければならないのです。
村田教授は「マーケティングは子供を生み育てることだ」といわれます。
愛情がなければ子供は育ちません。
それと同じように商売も愛情をベースにしないとうまくいかないのです。
お客様に愛情を注げば必ず愛情を返してくれます。
日本から「商いの心」が薄れたのは、経営者自身が愛情を失っているからであり、景気の動きに一喜一憂するのではなく、愛情の糸をもう一度紡ぎ直すことからやり直さなければ永久に消費の回復はやってこない。
これからの商売は「顧客満足=カスタマーズサティスファクション」では不足で「顧客幸福=カスタマーハピネス」を追求しなければならないと主張されています。
 ここのところ急速に景気が冷え込んできており、今迄と同じことをやっているのではとてもやっていけないという気がしておりますが「商いの心」「愛情」というものをもう一度考え直さなければならないのではと思います。
村田教授は卒業生を中心に結婚式の媒酌人を270組務め、19組が離婚しましたが17組を再婚させたとのことです。
アフターサービスもマーケティングの大切な要素だと言われています。

12月 6, 2008 2.チャレンジ |