« 職場に蔓延する「9時5時うつ」〈11月〉 | トップページ | 谷津バラ園〈11月〉 »

2008年11月 7日 (金)

凡事徹底(ぼんじてってい)〈11月〉

 原油の価格が下がりガソリンの値も大分下がってきたようですが、石油値上げに端を発した食品や石油製品の値上げの結果、消費停滞は全国的に広がっています。
車依存度が高く、年金生活者の多い地方は大都市圏以上に影響が大きく、一気に生活防衛に走りはじめているようです。
首都圏でも三越が池袋店と武蔵村山店を閉鎖しますが、地方でも久留米井筒屋(福岡県)と今治大丸(愛媛県)が閉鎖しました。
この2つの百貨店は半世紀以上、地域商業のシンボル的存在として親しまれてきた店ですが、数十億円の累積赤字を抱え郊外の大型ショッピングセンターとの競合が激しく、先に見通しもつかないところから閉鎖に追い込まれました。
地方百貨店はこの2店だけでなく、ここ一年程毎月前年割れの月が続いており、減少幅が10%を超える店も目立っています。
 こんな地方の逆風の中にあって、好調な業績を維持し続けている企業グループがあります。
10期連続増益、売上高7500億円の茨城県に本拠を置くベイシアグループです。
総合スーパーベイシアを中核とし、ホームセンターカインズ、作業服専門店のワークマン、コンビニのセーブオンなどをグループに抱えています。
総合スーパーのベイシアはヨーカ堂、イオンが営業利益率1.1%であるのに対し、3.7%と3倍以上の差をつけています。
 イオンをはじめとするスーパー、百貨店、コンビニなど流通大手各社は、少子高齢化などで国内市場は縮小・停滞が予想されるため、海外に活路を見出そうとしています。
しかしベイシアはその縮小・停滞が予想される国内市場で、買収も合併もなしで2010年には今より2500億多い1兆円を超える計画をたてています。
 その武器はどこよりも安く売ることのできる仕組みづくりにあります。
しかしその仕組みは特別のものではありません。
原理原則を定め、誰にもできる小さなことを飽きることなく積み重ね、改良しつづける「凡事徹底」の執念にあります。
しかし「凡事徹底」の執念を50年間も続けてきた結果、商品づくり、店づくりの点で他店とは大きく異なる特色を持つに至っています。

第1にPB(プライベートブランド=自社開発商品)では儲けない

 小売業ではPBといえば、一般的には安いコストで生産し、粗利益を稼ぐ商品です。
しかしベイシアではPBは大きく儲けるのではなく、NB(全国ブランド商品)ではなし得ない超低価格を実現するための商品です。
 大手流通業ではPBの粗利益率は30%程度なのにベイシアでは10%以下です。
商品開発は客に驚きを与える価格設定から始めます。
ベイシアが狙うのはNBの半分か3分の1です。
しかしPBでありながら中身はNBと同じという商品がほとんどです。
そのためには中身はNBと同じにし、製造ラインが空いているときに作らせます。
包装機は銭単価でムダを剥ぎ落とし、素材や厚さ、デザインや色数など常に見直しをします。
随時パートナー企業の見直しをし、1つの商品を作るにあたって3社から見積もりを取ります。
その結果驚きの価格が実現します。
35円の豆腐は年間1200万丁、3パック60円の納豆は500万パック、2リットル98円のペットボトル入りの緑茶と烏龍茶は2品で600万本販売します。
社内には「販売効率改善部」があり、常に低価格実現の仕組みを考えています。

第2に地価の安い郊外にしか出店しない

 人口減少時代に突入し、多くの流通業は人口の少ない郊外を離れて都市部に出店する「都心回帰」の流れが鮮明になっています。
しかしベイシアは「田舎での出店ノウハウを蓄積したので都市部に出店する気はない」と群馬を中心とした北関東、千葉、東海地方を中心に、今後5年で50店を出店する計画です。
地方を攻めるのは土地の賃貸料が安いからです。
20年の定期借地契約が多いことから粗利に対する不動産経費の割合は大手流通業が30%前後に対し、ベイシアは19.5%と圧倒的に低くなっています。
建物もコストをかけないために平屋建てにします。
投資回収期間も5年以下で新規出店も既存店にしわ寄せがこないように、既存店の10%以内に抑えています。

第3に支払は現金で ⇒ 手形は25年間発行せず

 安いのはPB商品だけでなくNB商品のサントリーの「烏龍茶」、グリコの「ポッキー」という人気商品も3割程安くなっています。
安さを実現するためには全商品は現金取引で月末締翌月払いが原則です。
良く売れる食品の一部は週毎に決済し、現金で払っています。
1977年に欧米企業を視察し、手形取引の効率の悪さに気づき徐々に手形を減らし、最後の一枚は82年でした。
この最後の手形は、今後一切手形を発行しないという決意の象徴として会長室に貼られています。
新店オープンの際メーカーの担当者が応援に来ると、応援者に賃金を払います。
馴れ合いを排するためです。
接待、贈答受けも禁止です。

 「凡事徹底」を究めていった結果、通常の流通業のとる戦略とは全く逆の戦略が生み出されました。
その戦略は他社とは全く逆であるため、他社にはとうてい真似のできない、ベイシアだけの強みとなったのです。
まさに「凡事徹底、恐るべき」です。

11月 7, 2008 2.チャレンジ |