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2008年10月 7日 (火)

北京オリンピックと野球の惨敗〈10月〉

 北京オリンピックが終わりました。
中国の威信と誇りをかけた大会でしたが、国民に一致団結を求める点では大成功だったと思います。
開会式の延々たるマスゲームにはド肝を抜かれましたが、見ているうちにあまりの統一性にあきがきてしまい、途中で見るのを止めてしまったのは私だけではなかったようです。
 日本選手の活躍については、期待通りに成果をあげた北島選手は見事なプロ根性だと思いますが、男女マラソンは陸連の危機管理のなさを見せつけられました。
思い通りの成果を出せなかったものに柳本ジャパン、星野ジャパン、岡田ジャパンなどとマスコミが騒ぎ立てる団体競技があります。
こうした競技に対するマスコミの異常と思える盛り上がりには毎度、辟易(へきえき)していますが、星野ジャパンと称される野球については、メダルさえもとれない惨敗でした。
 この野球の惨敗の原因については、いろいろな見解があるようです。
元西鉄ライオンズの豊田泰光氏の見解にはなるほどと納得させるものがありました。
豊田氏は、「日本の野球が敗れたのは、国際野球よりも飛ぶボールを、軽いバットで打ってきたツケが回ってきたためだ」と主張されます。

 氏の主張は2つあります。
 1つは「良く飛ぶボール」の問題です。
プロ野球では数社の球が公認され、球団がそれを自由に選ぶことができます。
ファンが打ち合いを喜ぶため飛びがいいとされる球を使う球団が多いとのことです。
先頃、この球に使用球を変えた楽天の野村監督も「よく飛ぶ」と言っています。
飛ぶボールに慣れ親しみ、本塁打を水増ししてきたことで、日本の打撃は退化してしまいました。
金の韓国、銀のキューバは勿論、米国のマイナーの選手に比べても日本の打者のスイングは弱くなっています。
 2つ目はバットを際限なく軽くしていることです。
これは日本だけではありませんが、バットの重さよりもスイングスピードで飛ばす考え方が定着し、軽量のバットが主力になっています。
軽量バットだと手先だけでも振れるので、それなりのバッティングの恰好にはなるけれど腰が入りません。
だからたまにフルスイングすると転びそうになります。
日本の打者のフォームは洗練されていて美しいけれど、力強さが決定的に欠けてしまいました。
飛ぶボールを軽いバットで振っているうちに、いつの間にかひ弱な打者を生み出してしまったのです。
日本の球団できっちりと振るチームは今や西武ライオンズなど少数のチームになってしまいました。

 1つ目の指摘は特に重要です。
日本の中だけでしか通用しない標準にこだわって、その中でシェア争いと技術競争をしていた携帯電話の業界は、世界を相手に商売をしているノキアやサムソンにコストの点でとうてい追いつかず、一部の技術的優位を持っているにも拘わらず、世界のプレーヤーに伍していくことができなくなり、除々に脱落していっているのが実情です。
世界標準から外れたところで戦っていれば当然に、世界の中で通用しなくなっていくのは自然なことだと思います。
柔道の場合もポイント制という世界柔道の流れに逆らい、あくまでも一本勝ちという日本古来の考え方にこだわって、国内で戦っているうちに、ポイント重視の外国人選手に敗れてしまったというところが敗因だと思います。
周囲の流れを無視して、自分だけの流儀を押し通そうとすれば、負けるのは当然です。
 会社経営の場合も同じです。
成功のための要因は常に変化しています。
価格なのか、価値なのか、量なのか、質なのか、時間なのかを常に考え、その成功要因に自社を適合させていかないと成功することはできないのではないでしょうか。

 2つ目は効率を優先しすぎた結果、基本的に大切なことまでも失ってしまい、スイングが弱体化したことを指摘しています。
ヤマダ電気に買収されたマツヤ電気に同じことを見ることができます。
マツヤ電気は中堅の量販店で、地域家電店と同じような面倒見の良さで苦しいながらもなんとかやってきていました。
ところが、ヤマダ電気に買収されたため、コスト優先主義に切り替え、従来の面倒見の良さをなくしてしまいました。
その結果、顧客満足調査で前年は2位だったのが一気に16位まで下がってしまい、経営も急速に悪化してしまいました。
顧客基盤は面倒見の良さを要求する客であったのに、スイングの仕方を効率重視に変えたためにボールを打てなくなってしまったのです。

 豊田氏は2つのことを指摘したあと星野監督に頭を下げてもらうよりも、ボールの問題にきっちりと見解を示し、世界に日本を合わせるでも、日本を世界に合わせるのでもいいから統一の方向にもっていくことが敗者の責任であると結んでいます。
今のところプロ野球で、そうした動きが出ているという話は聞いていません。
細部にこだわって大勢をみないと勝てないのはプロ野球だけでなく、会社経営も同じではないでしょうか。

10月 7, 2008 2.チャレンジ |