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2008年2月 5日 (火)

間違いだらけの世界遺産〈2月〉

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1960年代後半、エジプトのナイル川流域にアスワンダムが建設されたとき、壮大な岩のアブ・シンベル神殿を水没から救うべく、ユネスコは移転事業を行いました。
この運動がきっかけで1972年世界遺産条約が締結され、6年後の1978年に最初の12件が登録されました。
現在では184カ国がこの条約を批准しており、保護か開発かの2つの路線の対立の中で大きな保護の成果をあげてきました。
例えばギザのピラミッド群の目の前の無粋な高速道路を阻止し、クジラの繁殖水域であるメキシコのエル・ビスカイノも巨大な塩田の建設を阻止できました。
特に深刻な破壊の危機にあるものは、「危機にさらされている世界遺産リスト」に入れられ、財政支援が与えられます(現在は30件)。
ガラパゴス諸島も危機遺産に指定され長期的な保護が保証されました。
 しかし世界遺産に登録された場所にはメディアがとびつき、観光客が押し寄せます。
今年7月に登録された石見銀山遺跡では直後の3ヶ月間の観光客が前年の同じ時期の4倍以上になりました。
1983年に登録されたインカの都市マチュピチュ(ペルー)はこの25年で観光客の数が1000倍に増えました。
このように「登録は観光業者にお墨付きを与えるようなものだ」という批判もあります。

今世界遺産は851

 そのため国連や各国の当局者の間でもこの事業のあるべき形が議論されています。
登録件数が多すぎることも問題です。
過去30年にユネスコは851件の世界遺産を登録してきました。
この5年間だけでも新たに120件が登録されました。
ユネスコの世界遺産センターが保護のために充てる予算は年間400万ドルです。
数が増える程、援助金の配分も減り、保存状態を監視する活動も手薄になります。
もっと少人数の案件に保護を集中させるべきだという意見もあります。
また南アフリカの砂漠やイギリスの廃鉱とタージマハルのような誰でもが認める偉大な遺跡を同じ「世界遺産」にすること自体に無理があるという声もあります。
また推薦手続きが煩雑すぎて先進国の申請が優先されがちです。
説得力のある資料を作成するためには、高い費用を払って専門家の助言を受ける必要があり、短くても数年かかります。
そのため世界遺産がフランスやイタリアなどのヨーロッパ諸国に集中し、アフリカには少なくなってしまいます。
さらに人類にとって「普遍的な価値」を誰が判断するかという問題もあります。
アメリカ人には「傑出した価値」があってもアフリカ人にはゴミ同然かもしれません。
究極のジレンマが残ります。

2月 5, 2008 3.スクラップ |